お盆が明けて
カテゴリー:季節の彩りカレンダー
お盆休みも終わりに近づき、少しずつ日常のリズムに戻る方も多い頃かもしれませんね。
昼間の暑さは変わらないのに朝夕の風にはどこか涼しさが混ざりはじめ、この時期になると、にぎやかだった夏の一場面が静かな時間へとゆっくり移ろいでいくようです。
今回の季節の彩りカレンダーは、そんなお盆明けの行事や、夏の終わりに感じる風物詩をテーマに綴ってみました。
ほんのひととき、ゆっくり読んでいただけたら幸いです。
お盆の終わりにあたる8月16日頃、多くの地域で「送り火」や「灯籠流し」が行われます。
これは、お盆の期間にお迎えしたご先祖様を、再びあの世へとお見送りするための大切な儀式です。
たとえば、京都で行われる「五山の送り火」
山の稜線に火が灯り「大」の文字などが夜空に浮かび上がるその姿は、静かでありながらどこか荘厳な美しさがあり、見る人の心を打ちます。
家の前や山の中腹などで火を焚く「送り火」には、道しるべの意味があり、ご先祖様が迷わず帰れるようにとの祈りが込められています。
こうした送り火の灯りは、ただの炎ではなく「ありがとうございました。また来年お会いしましょう」――
そんな感謝と祈りの気持ちを託した、心のあかしのようにも感じられます。
灯籠流しは、火を灯した灯籠を川や海に流し、ご先祖様の魂が無事にあの世へと帰れるよう願う行事です。もともとは仏教の「精霊流し」が由来とされ、ご先祖様への供養として古くから各地で行われてきました。
戦後には、戦没者の慰霊や平和への祈りを込めたかたちとしても広まり、今では宗派を問わず誰でも参加できる供養のスタイルとして親しまれています。
近年は、自然環境への配慮から、川に流さずに特設の池に浮かべたり、LED灯籠を使用する地域も増えてきました。
水面に浮かぶ灯りが静かに揺れながら流れていく様子は、ご先祖様の魂をそっと見送るような、幻想的で心安らぐひとときです。
関西地方を中心に行われる「地蔵盆」
地蔵盆は。毎年8月下旬頃、主に関西地方で行われる地蔵菩薩を祀る夏の行事です。子どもや旅人を守る仏さまとして広く親しまれており、特に子どもたちの健康と成長を願う大切な機会とされています。
地域の地蔵堂やお寺の前に子どもたちが集い、祈りを捧げたり、お菓子をもらったり、紙芝居や伝統的な遊びを楽しむことも。現代でも多くの地域で受け継がれ、子どもたちの笑顔があふれる夏の風物詩として親しまれています。
関東や神奈川県ではあまり馴染みがないかもしれませんが、地域によっては行われており、子どもたちの健やかな成長を願う大切な風習として、今も大切に受け継がれています。
送り火や灯籠流し、そして地蔵盆――
どれも、にぎやかな夏が少しずつ静けさへと移ろうなかで、人の心をそっと整えてくれる行事たちです。そんな余韻の中で、ふとした風景や音、においにも「夏の終わりが近づいているんだな」と感じる瞬間がありますね。
ここからは、そんな季節の移ろいを感じさせてくれる「夏の終わりの風物詩」をご紹介します。
日が落ちてあたりが静まり返った頃、どこからともなく聞こえてくるリーンリーンという鈴虫の音色。そのやさしく透き通るような響きは、夏の終わりを告げる風物詩のひとつです。耳に心地よく、暑さの残る夜の空気をそっと涼やかに包み込んでくれます。
カナカナカナ…と、夕暮れ時の空に響くヒグラシの鳴き声。その音色はどこか切なく、胸の奥にふっと懐かしさを呼び起こします。茜色に染まる空と重なるように鳴く声は、にぎやかだった夏の日々にそっと別れを告げているかのよう。ヒグラシの声は、まさに夏の終わりを象徴するような優しくも寂しげな響きをもっています。
真夏の入道雲が空を覆っていた頃とは違い、季節の移ろいとともに空が少し高く感じられるようになります。その広がった空に、やわらかな朱色の夕焼けが染まる頃、ふと足を止めたくなるような穏やかな時間が流れます。日が沈む時間もどこかゆったりとしていて空の色の変化を静かに楽しめる、そんなひとときです。
9月に入る頃から、町中や庭先でふわっと香ってくる金木犀。小さなオレンジ色の花を枝いっぱいに咲かせ、強すぎずやさしい甘い香りを漂わせます。姿は目立たなくても香りだけで季節の変わり目を感じさせてくれる植物です。この香りが漂いはじめると、本格的な秋の訪れがすぐそこまで来ていることを実感します。
昼間はまだ夏の名残を感じる暑さがありますが、朝や夜になると、ふと肌に触れる風に変化が現れはじめます。ひんやりとした空気が通り抜けると、どこか秋の気配を感じさせ、季節がゆっくり移ろっていることに気づきます。日ごとにその風はやわらかく心地よくなり、朝晩の空気が少しずつ過ごしやすくなっていくのを感じられる時期です。
萩や女郎花(おみなえし)、桔梗や撫子(なでしこ)など、秋の七草が野に少しずつ咲きはじめる頃。夏の花のような華やかさはありませんが、どれもやさしく落ち着いた色合いで、見る人の心をほっと和ませてくれます。風に揺れる姿や控えめながらも凛と咲くたたずまいに、秋ならではの趣を感じる季節です。
~ ご覧いただきありがとうございました ~
夏から秋へ、季節は少しずつ移り変わっています。にぎやかな夏のあとにふと感じる風の匂いや空の色に、ちょっと心がほぐれるような瞬間もありますね。
お盆もお仕事だったみなさま、本当におつかれさまでした。ゆっくりお休みできた方はご無理なさらず、また気持ち新たにお過ごしください。 🙂
この先の季節が、みなさまにとって穏やかで心あたたまる日々となりますように。
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